選択公理を使わない最大値最小値の定理の証明

閉区間 $I$ 上の連続関数 $f(x)$ には必ず最大値が存在することの証明で,まず,値域 $f(I)$ が上に有界であることを背理法で証明するのが最初のステップになっている本が多いと思います.で,上に有界でないと仮定すると,任意の自然数 $n$ に対して
$$
n < f(x_n) \in f(I)
$$
を満たす $x_n\in I$ が存在するから
$$
x_1, x_2, \ldots,x_n,\ldots
$$
という有界な数列がとれて,そこから収束する部分列をとる,みたいな流れが一般的です.しかし,これは
$$
A_n:=\{x\in I\mid n < f(x)\}
$$
で定義される集合が空でないことに着目して,そこから任意に $x_n$ をとってくるという議論をしているので,選択公理を用いています.

しかし,斎藤正彦先生の『数学の基礎 集合・数・位相』は,選択公理や背理法も用いずに簡潔に証明がなされてます.

$I$ の $n$ 等分点のうち,関数値のもっとも大きいもののひとつ(たとえば一番左)を $x_n$ とする.

この $x_n$ の定義であれば,いずれも有限集合からの選択しか行っていないので選択公理を使わずにすみます.その後は $(x_n)$ は有界だから収束する部分列をとり,その極限値を $c$ とするとき, $f(c)$ が最大値であることの証明に移ります.

有名な定理の証明は,どの本も似たような証明が多いのですが,斎藤正彦先生はやはり凄いと思いました.

追記

『数学の基礎』の証明を僭越ながらアレンジしてみました

「選択公理を使わない最大値最小値の定理の証明」への2件のフィードバック

  1. はじめまして地方の国公立大学に通う大学生です。齋藤正彦先生の最大値最小値の定理の証明に関して、
    1/δより大きい自然数nをとると、d-δとd+δの間にn等分点がある。f(u)≦f(a_n)≦f(c)となり、矛盾である。
    と言う説明があるのですが、なぜf(a_n)≦f(c)が成り立つのかわかりません

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    • コメントありがとうございます.齋藤先生の『微分積分学』の証明でしょうか.読んでみたのですが,確かに私も $f(a_n)\leqq f(c)$ に引っかかりました.一応,説明はできたものの,真面目な議論をすると長くなるので齋藤先生も濁してしまったのかもしれません(もしくはもっと明らかな方法があるのかも.ちなみに『数学の基礎』での証明の方が背理法を用いずに連続性を鮮やかに利用して証明しているので,こちらがおすすめです).

      では,$f(a_n)\leqq f(c)$ の証明の概略をお伝えします.図を描きながら考えていただくと分かりやすいと思います.

      ある $n$ に対し $f(a_n) \gt f(c)$ を仮定して矛盾を導きます.まず $\varepsilon = \frac{f(a_n)-f(c)}{2}$ とおき,$f$ の連続性より,ある $\delta$ を用いて,
      $$
      c-\delta\lt x\lt c+\delta
      $$
      なる $x$ に対し
      $$
      f(x)<f(c)+\varepsilon\quad\text{i.e.,}\quad f(x)<\frac{f(a_n)+f(c)}{2}
      $$
      とでき(i.e. はすなわちの意味です),
      $$
      a_n-\delta \lt y \lt a_n + \delta
      $$
      なる $x$ に対し
      $$
      f(a_n)-\varepsilon \lt f(y)\quad\text{i.e.,}\quad \frac{f(a_n)+f(c)}{2}\lt f(y)
      $$
      とできます.つまり
      $$
      c-\delta \lt x\lt c+\delta,\quad a_n-\delta \lt y\lt a_n+\delta
      $$
      なる $x, y$ に対し
      $$
      f(x)\lt f(y)\tag{$\ast$}
      $$
      が成り立ちます.

      次に $(a_n)$ のある部分列 $(a_{i(k)})$ が $c$ に収束するので,十分大きな $i(k)$ に対して
      $$
      c-\delta \lt a_{i(k)}\lt c + \delta
      $$
      とできます.このとき $I$ の $i(k)$ 分点で,$a_n-\delta$ より大きく $a_n+\delta$ より小さい $v$ がとれます(必要に応じて $i(k)$ を大きくとる).このとき,$(a_n)$ の定義より,$f(a_{i(k)})\geqq f(v)$ が成り立つはずですが,$(\ast)$ に矛盾します.

      書き終えてみたものの,やはり長くなりました.もっと簡単な証明があるかもしれません(背理法を使わずに直接的にサクッと説明ができるかもしれません).やはり,『数学の基礎』の証明がおすすめです.

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