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実数の連続性と同値な定理はたくさんありますが,高校生にとって最も連続っぽいなあ,と思える定理は中間値の定理ではないでしょうか.ということで,中間値の定理を仮定して,実数の性質の基本的な話を展開していこうと思います.中間値の定理を用いるにあたって,$\varepsilon$-$\delta$ 的な連続関数の定義を本当はしなければいけませんが,高校の知識で無理矢理デデキントの定理を証明します.

デデキント切断

$\R$ の空でない部分集合 $A,\ B$ が以下を満たすとき,$(A, B)$ を $\R$ の切断という:

  1. $A\cup B=\R,\ A\cap B=\emptyset$,
  2. $\forall a\in A\st \forall b\in B\st a < b$.
切断の基本性質 1

$(A, B)$ を $\R$ の切断とするとき

  1. $a\in A$のとき,$a’\lt a\Rightarrow a’\in A$,
  2. $b\in B$のとき,$b\lt b’\Rightarrow b’\in B$.

(i) のみ証明する.$a’\notin A$ ならば,$a’\in B$ より $a\lt a’$.特に $a \leqq a’$.よって $a’\notin A\Rightarrow a\leqq a’$.これの対偶をとればよい.

切断の基本性質 2

$(A, B)$ を $\R$ の切断とする.$\max A, \min B$ は両方存在することない.

$\max A,\ \min B$ が存在したとする.切断の定義より $\max A \lt \min B$.このとき

$$m:=\frac{\max A + \min B}{2}$$ は,$\max A < m <\min B$ を満たすが,$\max A$ の最大性と $\min B$ の最小性より,$A$ にも $B$ にも属さない.これは $\R = A\cup B$ に矛盾する.

デデキントの定理

切断 $(A, B)$ に対し,$\max A$ または $\min B$ の片方だけが存在する.

前の補題より,$\max A,\ \min B$ が両方存在することはない.$\max A$ も$\min B$ が存在しないとする.関数 $f: \R \to \R$ を
$$
f(x) = \begin{cases}
1 & (x\in A)\\
-1& (x\in B)
\end{cases}
$$ で定義する.任意に $a\in A$ をとると,$\max A$ が存在しないことより $a\lt a’$ なる $a’\in A$ が存在.切断の基本性質 1より,$x\lt a’$ なる $x$ はすべて $A$ に属するから,

$$x\lt a’\Rightarrow f(x) = 1$$ だから,$x$ が十分 $a$ に近いときを考えれば
$$\lim_{x\to a} f(x) = 1 = f(a) $$ が分かり,同様にすると,任意の $b\in B$ に対し
$$\lim_{x\to b} f(x) = -1 = f(b)$$ が分かる.よって,$f(x)$ は $\R$ 上の連続関数.$a_0\in A,\ b_0\in B$ をとると,中間値の定理より $f(c)=0$ を満たす $a_0\leqq c\leqq b_0$ が存在するが,$f(x)$ は $\pm 1$ しかとらないことに矛盾.

上界・上に有界・下界・下に有界

$A\subset \R,\ s\in\R$ とする.
$$\forall a\in A\st a\leqq s$$ が成り立つとき,$s$ を $A$ の上界という.$A$の上界が少なくとも一つ存在するとき,$A$ は上に有界であるという.また,
$$\forall a\in A\st s \leqq a$$ が成り立つとき,$s$ を $A$ の下界という.$A$の下界が少なくとも一つ存在するとき,$A$ は下に有界であるという.

「$s$ が $A$ の上界である」は
$$\forall a\in A \st a \leqq s$$ と表せるので,これを否定することで「$s$ は $A$ の上界ではない」という論理式は
$$\exists a\in A \st a \gt s$$ と表せる.また,「$A$ が上に有界である」を論理式は

$$
\exists s\in\R\st\forall a\in\R\st s\leqq a
$$ と表せるので,「$A$が上に有界でない」は

$$
\forall s\in\R\st\exists a\in\R\st s\gt a
$$ と表せる.$A$ が最大値が存在することを論理式で
$$
\exists m\in A\st\forall a\in A\st a\leqq m
$$ と表せるので,「$A$ の最大値が存在しない」は
$$
\forall m\in A\st\exists a\in A\st a\gt m
$$ と表せる.論理式の処理に慣れておこう.

上限・下限

上に有界な集合 $A$ に対し,$A$ の上界の最小値が存在するとき,それを $A$ の上限といい,$\sup A$ とかく.下に有界な集合 $A$ に対し,$A$ の下界の最大値が存在するとき,それを $A$ の下限といい,$\inf A$ とかく.

上に有界な空でない $A$ に対し,$\sup A$ が存在する.

$A$ の上界全体の集合を $S$,$S$ に属さない数全体の集合を $R$ とすると,$(R, S)$ が $\R$ の切断になることをまず証明する.直ちに,$R\cap S = \emptyset,\ R\cup S = \R$.$A$ が上に有界であることより,$S\neq \emptyset$.$A\neq\emptyset$ より,ある $a\in A$ が存在し,$a-1$ は $A$ の上界ではないから $a-1\in R$,つまり,$R\neq\emptyset$.さて,任意に $r\in R,\ s\in S$ をとる.$r$ は $A$ の上界ではないから,ある $a\in A$ が存在し,$a\gt r$.$s$ は $A$ の上界だから $a\leqq s$.よって,$r \lt s$.よって $(R, S)$ は $\R$ の切断.また,$a\in S$ のとき,$a=\max A = \sup A$ となるから上限の存在が示せた.$a\notin S$ のとき,$a$ は上界でない,すなわち,$a\in R$.$r\in R$ は任意であった.それより大きい $a\in R$ が存在するということは,$\max R$ が存在しないことを意味する.デデキントの定理より,$\min S$,すなわち,$\sup A$ が存在する.

下に有界な空でない集合 $A$ に対し,$\inf A$ が存在する.

$-A:={-a\mid a\in A}$ が上に有界で上限を持つことを利用すれば簡単に証明できる.

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